Chateau Lynsh-Moussas
シャトー・ランシュ・ムーサ
18世紀にポイヤックのランシュ伯爵の領地がランシュ・バージュと分割されてできたランシュ・ムーサは、葡萄畑を含む200ha以上の広大な領地を持ち、1855年に格付け畑に認定されたことで、広くその実力が認められるようになった。
1919年に当時デュアール・ミロンを共同所有していたジャン・カステジャが買い取ることとなった。この地に変化が訪れるのはこのときである。畑は改善され、セラーと発酵室が改築されたことで、シャトーは近代的になった。テロワールの多様性が十分に表現されるように畑は入念に手入れされ、エシャルダージュ(枝打ち)や除葉、房の間引き、さらには手摘みによる収穫といった作業によって葡萄は最高の状態で発酵室へ運ばれるようになった。2001年にはエミールとフィリップ・カステジャがセカンドワインを導入し、シャトーを見下ろす丘にある区画にちなんで「レ・オー・ド・ランシュ・ムーサ」と名付けた。
ランシュ・ムーサのワインは、濃く深みのある色調、赤い果実のアロマ、まろやかな味わいが高く評価されており、さらに、その熟したタンニンは偉大なポイヤックに典型的なカシスのニュアンスを伴い、ゆったりとしたボディと極めて美しい余韻の長さを誇る。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
ランシュ=ムーサはカステジャ家が所有管理しているが、ボルドーの有名なネゴシアン、ボリー=マスー社を運営している一家でもある。同社が手がけるワインは1980年代前半以降、特にポイヤック(シャトー・バタイエ)、サン=テミリオン(シャトー・トロット・ヴィエイユ)、ポムロール(ドメーヌ・ド・レグリーズ)などの有名どこでは相当な改善が見られるようになったのだが、ランシュ=ムーサはそれでも軽く、往々にして水っぽい、単純な、個性と器量に欠けるワインを生産し続けていた。控えめながらも品質に改善が見られるようになったのは1994年からのことである。
~一般的な評価~
畑の立地条件はとく、1994年以降は品質にもいくつか目立った改善が見られるにもかかわらず、このシャトーは中身やふくよかさに欠けているのを気になるほどのタンニンで埋め合わせたような、そこそこのワインを生産することに満足してしまっているようだ。この五級シャトーの出来はブルジョワ級と同レベルである。この価格帯ならもっとよいワインを買うことができる。さらに加えて、ランシュ=ムーサを長く寝かせすぎるのはおすすめできない。タンニンが十分に溶けこむ前に果実味が姿を消してしまう傾向があるのだ。
平均年間生産量:24万8000本
畑 面積:58.0ha、平均樹齢:25年、植樹密度:8300本/ha、平均収量:55hl/ha
育成:発酵とマセレーションは温度管理されたステンレスタンクで21日間。熟成は60%が新樽、40%が1年使った樽で12~16ヶ月。清澄はするが、濾過はしない。
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニョン70%、メルロー30%
所有者:カステジャ家