Chateau Latour
シャトー・ラトゥール
男性的なワインの象徴
14世紀、ボルドー地方がイギリス領だった時代、このシャトーの場所にはフランス軍を監視するためのイギリスの要塞がありました。この要塞が「ラトゥール(フランス語で「塔」の意)」です。ジャンヌ・ダルクで有名な百年戦争によってこの塔は崩壊され、シャトーも崩壊してしまいました。しかし、ラトゥールの復興を願うボルドーの人々の熱意により、シャトーは回復しました。
「女性的な」と形容されるマルゴー、ラフィットに対し、重厚丹精で力強い味は、男性的なワインの象徴である、とされています。また、いかなるヴィンテージにおいても素晴らしい品質を保つワインとしても有名です。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
ラトゥールはポイヤックとサンジュリアンの境という印象的な土地、壁をめぐらしたレオヴィル=ラス・カーズのブドウ畑のすぐ北に位置している。クリーム色のいかめしい塔が立っているので、道路からでもすぐ分かる。ワインのラベルにもなって有名なこの堅牢な塔は、17世紀、もとはイギリス人が15世紀に海賊の攻撃から身を守るために建てた要塞のあった場所に建造され、以来、ブドウ畑とジロンド河を見下ろしている。
ラトゥールはボルドーのメジャーなシャトーでは一握りしかない、外国企業に経営されてきたシャトーのひとつだった。1963年から1994年までラトゥールを所有していたのはイギリス人だったが、1994年にフランソワ・ピノがこの土地を買い取り、フランス人の元に戻ったのである。
ここで生産されるワインは非の打ちどころのない古典的なもので、すばらしいヴィンテージも凡庸なときも、また出来の悪いヴィンテージでも、一貫して秀逸な品質を見せる。このために長年、多くの人がラトゥールをメドックの最上のワインと考えてきたのである。並、または貧弱なヴィンテージにもボルドー1のワインを産出するという評判は、1960年、1972年、1974年については完璧に立証されているが、、最近の貧弱なヴィンテージ(1977年、1980年、1984年)には、ラトゥールのワインはびっくりするほど軽くでき上がって、ほかのいくつものシャトーより見劣りがしている。
ラトゥールのワインはまた、頑固なまでに時間のかかる熟成でも有名だ。たっぷり20年から25年、瓶の中で熟成し、かなりのタンニンを流し、そのすばらしい力強さと深み、豊かさを示すようになる。このスタイルは、ワイン解説者に「勇壮」とか「男性的」「頑強」と言われてきたが、1983年から1989年の間にかすかだが、それと分かるほどにやわらいだようだ。ラトゥールのスタッフは強く否定するのだが、私のテイスティングではより穏やかで、とっつきやすいスタイルと感じた。幸い、このような不真面目な傾向は、ラトゥールが1990年から再び傑出したワインを生産し始めると、消えてしまった。
1982年と、やや劣るが1986年が優れたラトゥール・ワインの年であることは否定できないとはいえ、概して際立った10年間ではなかった。1983年、1985年、1986年の大豊作を処理するのに発酵所(キュヴェリー)が足らなかったのは公然の秘密である。そのため、収穫されたブドウを収容するべく発酵槽を早く空けなければならなかったのだ。地下のセラーやキュヴェリーを広張して、ボルドー最大の豊作年の1989年には何とか間に合った。ただし、1983年、1985年、1988年、1989年のラトゥールのテイスティングでは、客観的に言って、今世紀のそれまでのどの年代と比べてのはっきりと軽く、力強さが薄れ、凝縮感の落ちたワインとなった感がある。1990年や1994年、1995年、1996年のラトゥールは元の状態に戻った。
それでもラトゥールのワインが世界有数の、凝縮して豊か、タンニンの強いフルボディであることに変わりはない。十分熟すと、何とも言えない新鮮な胡桃となめし革とブラックカラント、それに重々しいミネラルの香気を含むブーケを放つ。口に含むと並外れて豊かだが、決して重くない味わいでる。
ロバート・パーカーJr.「ボルドー第4版」より
ラトゥールのスタッフは常々ラトゥールの「セカンド」ワインなのだから品質的には1855年の格付けニ級と同等であると主張してきた。事実、彼らは、ラトゥールではレ・フォール・ド・ラトゥールのブラインド・テイスティングの際に比較対象として二級シャトーのワインが出されていると主張する。もし、レ・フォール・ド・ラトゥールがとてもよいものにならない場合は、ポイヤック(サード・ワイン)に格下げするかどうかの決断がなされているという。私も、例えば2000年、1996年、1982年のような特定のヴィンテージでは彼らの査定に同意したいのだが、より客観的に見ると、レ・フォール・ド・ラトゥールは四級相当の品質である。もっとも、それでもボルドーで最上の「セカンド・ワイン」であることに変わりないのだが。
醸造法はラトゥールとまったく同じだが、ブドウはプティ・バタイエ、コンテス・ド・ラランド、そしてレ・フォール・ド・ラトゥールの3ヵ所の畑のものが使われる。また、上記に加えて、ラトゥールのロットでもあまり「グラン・ヴァン」とは言えないとみなされたもの(若木のものが多い)もブレンドされる。レ・フォール・ド・ラトゥールの特徴は、ラトゥールそのものとびっくりするほど似ている。ラトゥールよりは軽く、早く飲み頃になるだけである。ボルドーの有名シャトーで生産される最上のセカンド・ラベル(あるいはマルキ)であることに間違いはない。
※注記:シャトーを取り囲む47haの区画は「ランクロ」と呼ばれる。古いブドウの木が植わっていて、必要なときしか植え替えられない。この一画こそ、グラン・ヴァンの最も重要な部分だ。収穫は2つに分けられる。最初の「若い木からの収穫」では、若い木からブドウが摘まれ、通常レ・フォール・ドゥ・ラトゥールか、一般的な「ポイヤック」になる。そして液果が完全に熟すとグラン・ヴァン用に摘まれ、収穫の完了となるのだ。
レ・フォール・ドゥ・ラトゥールは、次の3つから作られる。
①ランクロの若いブドウの木から
②ランクロのキュヴェの中で、味わってみてグラン・ヴァンに適さないとされたブドウから
③ランクロ外の土地、「コンテス・ドゥ・ラランド」とか「プティ・バタイエ」、「サン=タンヌ」というような、1世紀以上ここに属していた畑から。 普通レ・フォール・ドゥ・ラトゥールは70%のカベルネ・ソーヴィニョンと30%のメルローで構成され、そのうち3分の1は若い木から、3分の2がランクロの外の木から採れたものだ。これらのブドウの木は1964年に植えられた。だからこれを若い木だけから採ったセカンド・ワインだと考えるのは間違っている。ランクロの外のブドウの木が樹齢を重ねるに従って、レ・フォール・ドゥ・ラトゥールの品質は着実に向上しているのである。
平均年間生産量:20.000本
畑 面積:65ha(シャトーの周囲の47haは「ランクロ」と呼ばれ、グラン・ヴァンに含まれる)、平均樹齢:40年(ランクロ)と37年(その他)、密植度:10.000本、平均産出量(過去5年間):45~50hl/ha(グラン・ヴァン)、55~60hl/ha(その他)
育て方:ブドウは手摘みで、完全に徐梗され、温度調節された200hl用ステンレス鋼のタンクに入れられる。発酵と二次発酵(キュヴェゾン)3週間、マロラクティック発酵はタンクの中で起こる。その後、新しいオーク樽に移され、ヴィンテージによるが20~26日間寝かされる。3ヶ月ごとに澱引きされ、瓶詰め前の冬の間、清澄処理(卵白による)される。
ブレンド比率:カベルネ・ソーヴィニョン80%、メルロー15%、カベルネ・フランとプティ・ヴェルド5%