Chateau Beychevelle
シャトー・ベイシュヴェル
16世紀にこの城に住んでいたフランス海軍提督エペルノン公爵に敬意を払い、ジロンド河を通る船はこの城の前では「ベッセ ヴォワール(帆を下げよ)」と叫び、帆を下げて通っていました。この言葉が語源となり、ベイシュヴェルと名付けられました。シャトー・ベイシュヴェルの城はボルドーで最も美しいと言われていますが、1757年にブラシエ侯爵が中世に立てられた城を取り壊し、その石材を使って建築し直した城です。
ベイシュヴェルでは17世紀中頃からワイン造りが行われていました。ブラシエ侯爵所有の時代頭角を現しますが、2代目がフランス革命により追放されて一時名声にかげりが見えました。しかし、その後パリの銀行家アルマン・アイン氏の所有に移り急速に復興します。彼の孫が亡くなった後、所有権が保険会社GMFグループに移り、1989年GMFとサントリーの共同出資会社グラン・ミレジム・ド・フランス社の経営となりました。
シャトー・ベイシュヴェルは所有面積250ha中、90haでブドウ栽培を行っています。メドックの中心地に位置し、深い礫層に覆われた土壌はベイシュヴェルから北に向かってラトゥールの畑まで続いている、カベルネ種の栽培に向いた土地です。平均樹齢は30年、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドを栽培しています。減農薬法を行い、環境と人に配慮したブドウ栽培を実施、2005年には「Terra Vitis」の認証を得ています。また、2002年にはHACCP(食品製造における安全管理の手法)も導入、環境や安全に配慮しながら、伝統的な製法でワイン造りが行われています。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
ボルドーを訪れる観光客がシャトー・ベイシュヴェルを見逃すことはあり得ないだろう。なぜなら、ここは、サン=ジュリアン村を目指して北へ向かう県道2号線で最初にぶつかる主だったシャトーだからである。道路に面した花の美しい庭は、速度を上げて疾走するドライバーたちの足を止め、彼らのカメラの格好の被写体となるのである。
ベイシュヴェルのワインは必ずしも一貫しないのだが、すばらしいものを生み出すことができそうだ。1960年代と1970年代は、ヴィンテージごとの品質が問題であった。また、1974年、1987年、1992年、1993年といったワインにとって凡庸な年には、ここのワインにも失望させられたし、偉大な年(1990年)に凡庸な出来だったこともある。最良の年であっても、ベイシュヴェルは目立ってなめらかであり、しなやかで、若いうちから飲むことができた。こうしたことが、潔癖な人や、伝統を重んじる人々に不必要な懸念を抱かせたと思われる。最近の優れたベイシュヴェルのヴィンテージは、10年の年月を経る前に十分に熟成しているのだが、15年かそれ以上熟成させることが必要不可欠のようである。しかしながら総じて、ここのワインは数十年も熟成させる必要はない。
1980年代の初め、所有者たちは、ベイシュヴェルの非常になめらかな味わいは、イギリス人たちが言うように「長生きしない」ことに気づき始めた。そこで1982年以来、よりしっかりした、より筋肉質のカベルネ・ソーヴィニョンを混ぜることや、余韻の長さを増す最も重要なキュヴェゾン期間、新しいオーク樽を増量して使うこと、またセカンド・ラベルのより軽いワインの導入など、次々と新しい方針を打ち出した。これらの技術はベイシュヴェルの品質を高め、1982年、1986年と1989年にこうした努力への評価を得た。1960年代と1970年代につくられた軽くて、しなやかで、エレガントで、早熟なスタイルのワインは、1982年以後、より堅実で、より濃厚なサン=ジュリアンへと移行したが、このワインの持つ目立ったスタイルや魅力、繊細さが損なわれることはなかった。
ベイシュヴェルはサン=ジュリアンの最も値段の高いワインの仲間ではなく、レオヴィル=ラス・カーズやデュクリュ=ボーカイユーよりはるかに安い値段で販売されている。
平均年間生産量:30万本
畑 面積:90ha(このうちサン=ジュリアンのアペラシオンを名乗るのは78ha)、平均樹齢:25年、密植度:8300~1万本/ha、平均産出量(過去5年間):55hl/ha
育て方:ブドウは手摘みで、厳しく選別された後、完全に除梗。発酵は28~30℃に保たれた65hlの発酵槽(ステンレス鋼とセメント)で21~24日間。プレス・ワインは別に保管される。12月のアサンブラージュの後、オーク樽に移される。新樽は55~60%で期間は16~18ヵ月。瓶詰めの前に清澄処理がされるが、濾過処理はされない。
ブレンド比率:カベルネ・ソーヴィニョン60%、メルロー28%、カベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルド4%