Chateau Angelus
シャトー・アンジェリュス
真のサンテミリオン愛好者であれば必ず飲む「祈りの鐘」という名の偉大なワイン
その名は昔からある小さなぶどう畑に由来し、そこで働く者は、この町にある教会の鐘(アンジェリュス)が同時に時を告げるのを耳にしていたという。わずか3haの小さな畑は、20世紀初めにモーリス・ド・ブアール・ド・ラフォレストに取得され、一族の私有地に組み込まれた。次いで、その息子のジャックとクリスチャンが、隣接する複数の小区画地を次々と買い足し、1960年に現在の形となった。この見事な所有地を、現在はユベール・ド・ブアール・ド・ラフォレストと、いとこのジャン=ベルナール・クルニエが取り仕切っている。
サンテミリオンの花形シャトーとして世界中に知られるシャトー・アンジェリュスは、一族が高めてきたテロワールの本質を表現している。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
アンジェリュスは常に、非常に大衆的な魅力を備えたサン=テミリオンである。大量生産されるワインの多くが輸出されていること、美しいラベル、魅力的でしなやかなスタイルなどによって、熱心なサン=テミリオン愛好家の中にもアンジェリュスの信奉者は多い。アンジェリュスはマゼラ・ヴァレーにあり、ブドウはその下方斜面の石灰質の粘土質ロームと、粘土が砂に入り混じった土壌に植えられている。畑全体が、完全に南に面している。
1960年代及び1970年代のアンジェリュスのワインは、若いうちは魅力的で強烈な果実味があるものの、ほんの数年のうちにそれが崩壊してしまっていた。しかし、1980年代になってすべてが変わった。ボルドーのエノロジストとして著名なミシェル・ロランをコンサルタントとして迎え入れたところ、彼はワインを100%オーク樽で熟成させるべきであると主張した。それ以前は、ここのワインは発酵槽で熟成され、オーク樽での熟成はまったくさせていなかった。小さなオーク樽(ポムロールのル・パンのような)で発酵させることにより、ここのワインは並はずれた複雑さと強烈さが備わった。これは、小さなシャトーが、多額の資金を労働力につぎ込むことをいとわない人々にしかできないことだ。なぜなら、時間がかかり、ひどく骨の折れる製法であるからだ。
その成果は驚くべきものであった。若き所有者であるユベール・ド・ブーアール・ラフォレもまた、以前よりもさらに厳しく選別して、グラン・ヴァンに最高の素材のみを使うようになったのは間違いない。1985年のサン=テミリオンの格付けにおいては、アンジェリュスは第一特別級への昇格を果たせなかったが、1996年には格上げされたのだった。
「新しい」アンジェリュスのスタイルもまた、強烈で、リッチで、しなやかで、ふくよかな果実味があり、若いうちに飲めるという特徴が強調されている。しかし、いまやこのワインの色は深みを増し、凝縮感があり、よりよい熟成を促すタンニンも増している。過去30~40年における最上のワインは、深遠な2000年、1998年、1996年、1995年、1994年、1990年、1989年、そして1988年である。それより古い、1986年より前のヴィンテージについては、かなり注意が必要である。こうしたワインの多くは、味が完全に分解してしまっているからである。
~一般的な評価~
サン=テミリオンの多くのシャトーの全体的なレベルが上がったのは、ユベール・ド・ブーアールの影響によるとこらが大きい。彼の舵取りのもとでアンジェリュスはその凡庸なイメージからの脱却し、このアペラシオンの品質革命のきっかけとなり、他のつくり手の進歩を促した最初のシャトーとなった。このシャトーは1980年代半ばに転換期を迎え、初めて最高のワインを生み出したのは1988年だった。それ以来、雨が多く非常に困難だった1992年や1993年、雹害にあった1999年ですら、つまずくことはなかった。アンジェリュスは、1996年のサン=テミリオンの格付け見直しで第一特別級に格上げされたが、これは当然のことと言えよう。最高のワインであり、真のサン=テミリオン愛好者であれば必ず買うべきワインである。
平均年間生産量:7万本
畑 面積:23.4ha、平均樹齢:30年、植樹密度:7000~8000本/ha、平均収量:32hl/ha
育て方:発酵とマセレーションは壁が二重になった小容量のステンレスとコンクリートの槽で3~5週間。マロラクティックと18~24ヶ月の熟成はオークの新樽で行う。清澄も濾過もしない。
ブドウ品種:メルロー50%、カベルネ・フラン47%、カベルネ・ソーヴィニョン3%
所有者:ド・ブーアール・ド・ラフォレと息子たち