Phelps Creek Vineyard
フェルプス・クリーク・ヴィンヤード
パイロットとしてアメリカ空軍、その後はデルタ航空に勤めた経歴を持つロバート・モルスは西海岸で生まれ育ち、幼い頃にワイン産地として急拡大する1960半ば~70年代のナパやソノマの葡萄畑を目の当たりにする。国際線の機長として世界中を移動する生活を送りながら、やがて子育ちに理想の田舎暮らしと幼い頃の原風景を探し求めて辿り着いたのがオレゴン州、ポートランドから100km東にあるフッド・リバー。葡萄畑に適した東、南向き斜面の丘と渓谷の美しい景観、その山容から別名オレゴン富士と呼ばれるフッド山を望むこの地に一目惚れし購入を決断。
コロンビア川を隔ててオレゴン州とワシントン州の境界両方に跨るAVAコロンビア・ゴージ内の西端に所有する12haのうちピノ・ノワールが10haでポマール・クローン、ディジョン・クローン777と115が植わる。気候はウィラメット・ヴァレーの銘醸地ダンディ・ヒルズと類似しているが、標高が290-365mと一層高い事が大きな特徴。豊富な日照量かつ冷涼な気候と大きな寒暖差、適度な粘土を含む火山質土壌がワインにスパイシーさと微かな葉巻の様な特色を与えている。
1990年に畑を開墾し植樹した後、初期の収穫した葡萄はキング・エステート、ポンジー・ヴィンヤーズ、シネアンなどのワイナリーへ販売。2002年より自社ワインを始め、醸造設備を構えて本格的な元詰めへ転換したのは2007年からで現在では年間約6万本を生産。2021年よりサステナブルの認証であるLIVE認証を取得。
2007年にポートランドで開催された国際ピノ・ノワール祭典(International Pinot Noir Celebration)にブルゴーニュから参加していたジュヴレ・シャンベルタン村のドメーヌ・マルク・ロワ4代目当主で当時27歳であったアレキサンドリーヌ・ロワと出会い意気投合。当年のフェルプス・クリークでのワイン造りを一緒に行う事を提案した事がきっかけで、以来毎年コンサルタントとして年に3,4回現地へ出向き、この良好な関係は今日まで15年間に渡り続いている。アレキサンドリーヌ曰く「毎年2回の収穫を行う事はとても大変ではあるが楽しい事でもある。オレゴンとブルゴーニュの大きな違いは気候が安定していること。同じピノ・ノワールでも素材が違うのでブルゴーニュと同じ手法を用いる事はないが、私が知る限りフェルプス・クリークのワインはオレゴンで一番伝統的、即ちブルゴーニュ的なスタイル」という。