Chateau Haut-Brion
シャトー・オー・ブリオン
5大シャトーの中でも通好みなワイン
ボルドー全体でも別格とされる名酒です。繊細さの蔭に力強さを秘めた複雑玄妙な逸品です。薫り高く凝縮感があり若い頃から口当たり良く、かつ長期熟成も可能なため、飲み頃が長期間に渡ります。
1935年にアメリカの財界人、クラレンス・ディロン氏が買い取り、現在は、ディロン氏の熱い意思をルクセンブルグ大公国ロベール皇太子殿下が受け継いでいます。
シャトー・オーブリオンは、メルロがカベルネ・ソーヴィニヨンより多くなるアッサンブラージュも独特のものです。またボルドーで最初に発酵槽にステンレスタンクを用いたことでも分かるように、技術革新に積極的なシャトーとしても有名です。
シャトーが所有する畑は南東向き、土壌は小石を含む河川礫層で構成されています。ボルドー市の南西、ペサック村に押し寄せる市街化の波に囲まれるように広がっているため、平均気温が周辺の畑に比べ高めで、ブドウが早く熟します。セルパン川とプーグ川の浸食によって生み出された複雑な地形。シャトー・オーブリオンの美点であるきめ細かい質感と複雑な香りに加え、しっかりとした骨格を備える雄大なスタイルです。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
ペサック郊外の活気ある商業地区にあるオー=ブリオンは、米国人が所有する唯一の第一級シャトーである。ディロン一族がオー=ブリオンを1935年に購入したとき、このシャトーは非常に貧弱な状態にあり、シャトーとセラーに多額の資金を投入した。現在は、この美しい場所は、グラーブの模範的なシャトーである。
オー=ブリオンのワインづくりは、明敏でハンサムなジャン・デルマ(ワインの世界における最も才能のある管理者の一人)が管理している。オー=ブリオンはまた、ボルドー・ワインにしては長期間(最長30ヶ月)新樽で熟成させるところで、ポムロルのクリネと並んで、ワインを瓶詰めする時期が最も遅いシャトーのひとつである。
オー・ブリオンのワインのスタイルは変化を遂げてきた。1950年代から1960年代初めにかけての、とびきり豊かで、土の香りのする、甘くさえあるワインは、1966年から1974年の間には、より軽く、やせて、気軽に飲める、いくらか単純なスタイルのクラレットに変り、第一級シャトーに期待する豊かさと深みを欠いていた。これが意図的なものなのか、あるいは単に少し低迷していただけなのか、いまだに答えは見つからない。オー=ブリオンのスタッフたちは短気であり、このような批判に対しては敏感である。1975年のヴィンテージからは再び、1966年以前には備わっていた、本来の土っぽい豊かさと凝縮味を取り戻した。今日、オー=ブリオンはまぎれもなく第一級シャトーの地位にふさわしいワインをつくっている。
偶然の一致なのかどうか分からないが、オー=ブリオンの質が1966年から1974年という時代を経て回復し始めたのは、ダグラス・ディオンの娘であるジョアンがこの会社の代表取締役となった1975年のことであった。最初の夫であるルクセンブルクのシャルル皇太子が亡くなった後、彼女は1978年にムシイ公爵と再婚した。これと同じくして、バーン=オー=ブリオンへまわされるブドウの量が増やされ、それによって、オー=ブリオンの品質が改善されたのは疑問の余地がない。さらに、ジャン・デルマに対し、このシャトーを運営する全権限が与えられたようだ。ボルドーすべての人々が認めるだろうが、彼はフランスにおける最も才能のある、また知識豊かなワインのつくり手であり、管理者の一人なのである。クローン選別についての、最新技術を集結しての驚異的な研究では、フランスでは彼の右に出る者はいない。1980年代に収穫が豊かになると、デルマは、ポムロルのシャトー・ペトリュスのクリスティアン・ムエックスと同様に、ブドウの房を切り取ることで収穫制限したのであった。この方法によっていっそう優れた凝縮味と驚異的な質を備えた1989年ものが生まれたことは間違いない。このワインは、初期の段階では1959年と1961年もの以来、最も賞賛に値するオー=ブリオンであると思われる。
ブラインド・テイスティングにおいて、オー=ブリオンが、第一級シャトーのなかでは最も外交的で軽いワイン、という印象をしばしば与えるという事実は興味深い。実際には、このワインは軽いのではなく、単に、オークの個性があって肉付きがよく、よりタンニンの多いメドックのワインや、よりシフトでメルロが支配的な、右岸でつくられたワインとは異なっているというだけなのだ。最高のヴィンテージにおいては、早熟であるにもかかわらず、このワインは30年かそれ以上熟成を続ける能力を持っており、ほかのいかなる第一級シャトーのワインよりも飲み頃である期間が長い。
1978年以来、オー=ブリオンの質的レベルが向上するに伴って、セカンド・ラベルであるバアン=オー=ブリオンの質も向上した。これはいまやボルドーで最高のセカンド・ワインのひとつであり、いくつかのヴィンテージでこれを凌いだことのあるセカンド・ワインといえば、名高いシャトー・ラトゥールのレ・フォール・ドゥ・ラトゥールくらいのものである。
オー=ブリオンでつくられる白ワインは依然として、グラーヴ地方で最高のワインであると評価されている。しかし、生産量が非常にわずかなため、所有者の要請で格付けされたことがない。とはいえ、驚異的なモンラッシェのようにふくよかな舌触りのある白のグラーヴづくりを追求するジャン・デルマの指導のもと、この白ワインはまったく力強いものとなっている。1994年、1989年および1985年といった最近のヴィンテージなどは、まったく驚くほどの出来栄えを示している。
私の個人的な感想を付け加えておくと、30年以上にわたって集中的にできるだけ多くのボルドー・ワインを試飲した結果、自分の試飲に生じた唯一の全般的な変化というのは、私がオー=ブリオンに対して、ますます深い愛情を抱くようになったということである。このワインに備わった、燻したような、ミネラル、葉巻の箱、甘いブラックカラントの特性は、私が年齢を重ねるにつれ、またジャン・デルマならきっとそう私に言うであろうが、私がより賢くなるにつれ、いっそう魅力的に感じられる。
<赤>
平均年間生産量:14.000~18.000ケース
畑 面積:43ha、平均樹齢:36年、密植度:8.000本、
育て方:収穫は手作業。発酵は温度調節された225hl入りのステンレス鋼の発酵槽で行われる。マストの温度によって、コンピューター制御でポンピング・オーバーし、温度調節する。平均温度は30℃。熟成は新しいオーク樽で22ヶ月間。新鮮な卵白で清澄処理される。
ブレンド比率:カベルネ・ソーヴィニョン45%、メルロー37%、カベルネ・フラン18%
<白>
平均年間生産量:7.800本、セカンド:5.000本
畑 面積:2.7ha、平均樹齢:36年、植樹密度:8.000本、平均収量:35hl/ha
育成:発酵と13~16ヶ月間の熟成はオークの新樽で行う。清澄も濾過もしない。
ブドウ品種:セミヨン63%、ソーヴィニョン・ブラン37%