Chateau Figeac
シャトー・フィジャック
サンテミリオン最古の由緒あるシャトー
ガロ・ローマンの時代にフィジャキュスが別荘を建て、自分の名をつけたと言われる、2世紀にまで遡る長い歴史を誇ります。現在シュヴァル・ブランの畑となっている土地も、かつてはフィジャックの畑だったという、素晴らしいテロワールを備えたこの地区における最古のシャトーの一つです。
サン・テミリオン村から遠く離れたポムロルとの境いに、一時は200haの広大な面積を所有していましたが、土地の分割を行い、現在の畑面積は約40ha。シャトー・シュヴァル・ブランと同様の、鉄分豊かな砂利を備えた土壌のため、右岸地区では珍しく、メルローよりカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンを多く栽培しています。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
30haをわずかに超えるこの中規模のシャトーは、シュヴァル・ブランから来る道の対角線上に砂礫質の高台に位置している(現在シュヴァル・ブランが所有している栃もかつてはフィジャックにふくまれており、もっと広かった)。フィジャックのワインは長い間、多くの評論家から、サン=テミリオンで2番目に優れたワインであると思われてきた。所有者のティエリ・マノンクールに言わせれば、フィジャックこそがこのアペラシオン最上のワインにほかならず、シャトーを訪れる人にもそう公言してはばからない。現在シュヴァル・ブランが所有しているブドウ畑からできるワインが、かつてはヴァン・ド・フィジャックとして売られていたという事実のみが、彼の言い分を補強しているようだ。他のサン=テミリオンの卓越性に多くの消費者が気づき始めたことに加え、サン=テミリオンの品質革命と、多くの知られざるシャトーが高品質のワインをどんどん生み出すようになったことで、フィジャックは、ますます激化する競争の矢面に立たされている。
貴族的な風貌で愛想のよいティエリ・マノンクールは、フィジャックを極めて大衆的なスタイルにつくっている。ここのワインのトップ・ヴィンテージは、スタイルや質において、途方もない高値で売られている近隣のシュヴァル・ブランに近く、その価格の差から想像されるほどの違いがあるわけではない。フィジャックは通常ルビー色で、豊かな果実味があり、メンソール、ハーブ、西洋杉、黒系果実の際立った香りのある、早熟でしなやかな、魅力的なワインである。タニックで渋いカベルネ・ソーヴィニョンの比率がサン=テミリオンの主要なシャトーの中では最も多いにもかかわらず、若いうちからよくなり、早く熟す傾向にある。最近のヴィンテージ(称賛に値するほど凝縮感のあるものでも)も、5~6年ですでに十分に飲み頃に達する傾向がある。瓶詰め後15年以上持ちこたえる可能性があるのは、最上のフィジャックのみである。こうした短所が見過ごされることはない。
フィジャックを批判する人は、収穫を遅らせ、現状のびっくりするほど短いマセラシオンの期間を長くし、セカンド・ワインのために選別を厳しくすれば、ここのワインはもっと深遠につくれる、アペラシオンで最も偉大なワインになれるはずだ、と言う。リブヌルの最も才能あるエノロジストの1人は、もし自分がワインづくりに携われば、フィジャックはシュヴァル・ブランを凌ぐことができると私に言ったものである。
フィジャックは不作のヴィンテージに好成績をあげている。私は、1年未満のフィジャックを判定するのにしばしば苦労する。幼い階段のここのワインはしばしばやせていて、茎っぽく、あからさまな野菜のにおいがするためで、樽での熟成が2年目を迎える頃からようやく肉がつき、重みが増してくる。砂礫を基盤とした土壌で栽培されるカベルネ・ソーヴィニョンとカベルネ・フランの割合が高いことが、この奇妙な特徴の原因になっているらしい。
フィジャックの価格は一般に、メドックの最上の二級シャトーのうち高価なものと同程度だが、つくられているワインの質を考えれば妥当で現実的なものと思われる。
サン=テミリオンに足を運びながら、マノンクール氏をシャトーに訪れる約束をとりつけないとしたら、怠慢のそしりを免れない。訪ねると、趣味のよい巨大な地下セラーを備えた美しい田舎にあるシャトーと、フィジャックはシュヴァル・ブランやオーゾンヌと同じレベルなのではなく、それらよりも上であると熱狂的に信じている所有者のマノンクール氏が、あなたを迎えてくれるだろう。
~一般的な評価~
このシャトーの所有者は私がここのワインに不当に厳しいと思っているが、私はフィジャックの大ファンなのだ。特別な年、例えば2000年、1998年、1990年、1982年、1964年などは、飲んだ人がシュヴァル・ブランと同じくらい複雑だと思うのもうなずける。こうした場合には、私はここのワインを買い、おおいに楽しんで飲む。しかしながら、あまりに多くのヴィンテージが凝縮感に欠け、熟成が早すぎるのだ。それが批判の理由である。常にフィネスのあるワインでありながら、フィジャックは水っぽい感じがするために、飲む人をしらけさせてしまう。また、カベルネ・ソーヴィニョンのブレンド比率が高いため、特にこの品種が十分に熟さなかった年には、ワインに心持ち野菜のような特徴が出てしまうことも強調しておかなければならない。しかし、近年のフィジャックは、その華麗なテロワールの能力に恥じないワインを生み出しているようだ。
平均年間生産量:12万本
畑 面積:40ha、平均樹齢:45年、植樹密度:5800本/ha、平均収量:45~50hl/ha
育て方:発酵とマセレーションは温度管理された木製槽で21~25日間。マロラクティックはヴィンテージによるが槽か樽で行う。熟成はオークの新樽で18ヶ月。清澄はするが、濾過はしない。
ブドウ品種:カベルネ・フラン35%、カベルネ・ソーヴィニョン35%、メルロー30%
所有者:ティエリ・マノンクール