Chateau Clerc-Milon
シャトー・クレール・ミロン
シャトー・ムートンが所有しムートンとラフィットに隣接するシャトー
メドック格付け第5級のシャトー・クレール・ミロンは、ムートン・ファミリーの中で次男と称されるシャトー。気品溢れるエレガントなスタイルで、「ムートンの代わりとして十分愉しめる」と定評があります。
18世紀までシャトー・ラフィット・ロスチャイルドが所有していましたが、フランス革命を経てクレール家の手に移りました。その後、他に重なる売却や相続によって、土地は細かく分割され荒廃していきました。しかし、そのポテンシャルを見出したバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドが1970年より所有し、分散されていた畑を次々と買収。畑の整備と再編を行い、品質を大きく改善させました。2007年には新たな醸造設備を設立するなどの変革を実施。近年では、2017年に高密植のブドウ畑に、除草剤を使わず雑草を処理するために、「TED」と呼ばれるロボットを試験的に導入しています。今尚、様々な改革によって品質を向上し続けるシャトー・クレール・ミロンは、「メドックの新たなお手本的存在」として注目を集めています。
ラベル物語
このワインのラベルには一組のダンスをする若い男女が描かれていて、これは結婚式を挙げたばかりの二人だといわれていますが、その楽しそうなラベルの裏には、悲しい愛の物語が秘められている事は、あまり知られていません。
ロートシルトとは、英語読みでロスチャイルド(大富豪一族)を意味します。このロートシルト家を若干20歳で継いだのがフィリップ男爵でした。フィリップ男爵は最愛の妻リリーと娘フィリピーヌに囲まれ、若いシャトー主として幸せに過ごしていました。
しかし、幸せもつかのま第二次世界大戦によって大きな不幸がフィリップにふりかかりました。ユダヤ系の大富豪であったロートシルト家はナチスドイツからの迫害を受けて、幸せだった一家は離散してしまします。フィリップは難を逃れてフランス軍に、妻リリーはゲシュタボに捕らえられてしまい、娘フィリピーヌは行方不明、ワイナリーも没収されてしまいました。
戦後父と娘は劇的な再会を果たしたのですが、妻リリーは収容所で悲惨な死をとげてしまっていました。フィリップ男爵の悲しみは深く、よほど妻リリーを愛していたのか中々立ち直れなかったそうです。そんな彼を救ったのは二度目の妻ポーリーでした。このポーリー夫人の多方面に渡る活躍でついに1973年に格付け第一級に昇格することが出来たのです。
一方、もう一つ所有していた畑では娘のフィリピーヌが大切にワインを造り続けていました。それが、シャトー・クレール・ミロンです。そして、このラベルに描かれている二人は結婚直後のフィリップと最初の妻リリーであると言われているのです。
楽しそうに二人が踊っているラベルの裏に、この様な悲しい物語を持つワイン、それがシャトー・クレール・ミロンなのです。
ロバート・パーカーJr.ボルドー第4版より
フィリッピーヌ・ロートシルト男爵夫人の所有するもう1つのシャトー、クレール・ミロンは、1970年に買収された。シャトーの建物はないが、畑はムートン・ロートシルトとラフィット・ロートシルトに隣接する絶好の位置にあり、また、今は稼動していないが静かなポイヤックの町の中心をなす石油精製所ともじかに接している。1985年までのワインはしばしば軽く、際立ったところもないものだったが、最近はみずみずしいフルティーな品質や、あり余る量の香ばしい新樽香のほか、昔より偉大な深みと、風味の広がりが出てきた。男爵夫人のほかのシャトー元詰めワインと比べると、クレール・ミロンは最も外向的で、若いうちから評価しやすいワインだ。最近のヴィンテージの品質から判断すると、過小評価されている。
~一般的な評価~
ムートン・ロートシルトとラフィット・ロートシルトの間というよい立地に恵まれている。1985年以降のワインは相当よくなってきており、1995年以降は一貫して秀逸なものとなっている。ポイヤックで最もフルティーで食欲をそそるワインの1つで、一般的外向的で、かなり早めに飲む必要がある。近年見せている品質レベルから判断すると、特に最良のヴィンテージのものなら三級とまではいかなくとも四級に格上げされてもよいだろう。必買品。
畑 面積:30.0ha、平均樹齢:51年、植樹密度:8450本/ha、平均収量:55hl/ha
育て方:発酵は21℃に温度管理されたステンレスタンクで15~22日間。熟成は新樽約30%で16~18ヶ月。清澄と濾過については詳細不明。
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニョン46%、メルロー35%、カベルネ・フラン15%、プティ・ヴェルド3%、カルムネール1%
所有者:GFAバロンヌ・フィリッピーヌ・ド・ロートシルト